時をかける少女/筒井康隆★★★☆☆ [キロク]
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている──そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。
思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない思い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。
収録作品:「時をかける少女」「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」
映画「時をかける少女」の原作。「新装版」なので、画がキャッチーになっていた。しかし内容は、なんというか、映画とはほぼ?まったく?異なっている。同じなのは「理科室から始まる時空移動」というところくらい。和子は自分の意思では時空を移動することができないし、回数の指定も特にない。映画と違い、こちらは「事故」という感じで描かれている。ほぼ同じ機構を使った作品に「タイム・リープ」がある。当時は知らなかったけど、これはたぶん時をかける少女のオマージュだ。ミステリーとしても成立していて、自分はどちらかというとタイム・リープの方が好きだと感じた。まあ、書かれた年代に大きく差があるから当然なのかもしれないが。
同時収録されている「悪夢の真相」は、すごくまとまっているというわけではないが、テーマとしては集約されていて面白かった。「果てしなき多元宇宙」は、なんというか、ストーリーを描きたかったというよりは、パラレルワールドという世界の構造を描きたかったような感じがした。
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